いつか帰るところ
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【デッキ】Mono-Black Devotion(walk with you)
軍勢〜ニクス発売までの自分のスタンダードへの取り組みを文章にしてみたんですけど、クッソ長くなった上めっちゃクサくなりました。
デッキレシピだけ見たい人は一気に下までスクロールしてくれよな。
デッキレシピだけ見たい人は一気に下までスクロールしてくれよな。
2月の7日。神々の軍勢の発売日、晴れる屋で出た初めてのFNM。
雑に組んで持って行った、神々の軍勢のカードが1枚も入っていない青単は、その頃まだ煮詰められていなかった黒単やグルールや白ウィニーの群れを蹴散らし、素直に3-0して手に入れたエルフの神秘家はシキちゃんを喜ばせ、ぼくたち二人の仲を暖めてくれた。
正直なところテーロス〜軍勢発売までの時期は、マジックこそしていたがトーナメントには一度も出ていなかった。
多元宇宙へと導いた新しい仲間と共に、だいたい週一ペースで小さなお店に集まって、ワイワイ楽しく戦っていた。
使ってみたいカードを買い、時には大会で優勝したデッキレシピをコピーしながら、いつものメンツやたまに会う友達と勝ったり負けたりを───
否。
そこには「負け」がなかった。
トーナメントにこそ出ないものの、高騰前に買った《変わり谷》やジェイス等のカード資産を持ち、情報ブログに載った強力なデッキレシピをそのまま形にしていた俺は、そもそも身内戦では殆ど負けなかった。
いい試合こそあったものの、結局最後には《波使い》が──もしくは《変わり谷》が相手のライフをゼロにして勝利を持ってきてくれていた。
軍勢の発売日に出たフライデーナイトマジックは、テーロス期にマジックを初めたかじわらしょう…今やMtG用のTwitterアカウントを持つやる気勢の一人となったかじくんに誘われて出た物だった。
思い返せばテーロスブロックが始まる直前までは俺も、トーナメントマジックにはそれなりに触れていた。
トップメタから落ちて値段を下げていた《オリヴィア・ヴォルダーレン》様との出会いを通し、ほぼ独自に作り上げた除去ガン積みのグリクシスコントロールは、ローテーション前のカオス渦巻くスタンダード環境でそれなりに戦果を上げた。
《吸血鬼の夜鷲》と《霊異種》が何度も俺を全勝卓へと導き、ギリギリでトップした《ラクドスの復活》が大型店舗の手練達を蹴散らして、3−0の栄光と煌めくFNMプロモを俺に与えてくれた。
身内で楽しく遊ぶマジックは楽しかった。
ただ物足りなさもあった。
全身の皮膚がひりつき喉が渇くような緊張と熱狂の中、
「本気」の相手との命の取り合いをする、戦いの記憶──
あの熱をもう一度。
それも──できればまた自分に合う本当に完璧なデッキで感じられたら。
3−0した青単は(happymtgにレシピが残っているが)本当にテンプレ通りのもので、そもそも工夫する余地のあるアーキタイプでもなかった。
何よりそれは、Mono-Blue Devotionは、「青」をデッキ名に冠するものの、ビッグブルーやユーロブルーのようなコントロールではなく、どちらかと言えば白単ウィニーのような良質な生物で組まれたアグロデッキだった。
このブログには自分が使ってきたデッキで、それなりにしっくりきた物は載せているので、過去の記事を全部見返してもらえれば俺がどういうデッキが好きかがわかると思う(面倒くさいので誰もそんなことはしないけど。俺だってしないし)。
わかりやすく一言で書くなら──俺はコントロールの方が好きだ。
それも除去や打ち消しをふんだんに入れたもので、できれば白を使いたくないと思っていた。
というのも俺はRTRブロックから多元宇宙世界に飛び込んだので、トーナメントに出るに際し一番の大きい壁は何と言っても《スラーグ牙》……
そしてそのスラーグ牙が退場した今、目の上のたんこぶは《スフィンクスの啓示》と《至高の評決》に絞られていた。
新しいデッキについての条件は、
・トーナメントレベルでの実績がある。
・コントロールである。
・啓示と評決を使用しない。(そもそも青白の土地を1枚も持っていないのだが)
・できれば新しいカードを買わなくて済む(この頃は本当にお金がなかった!今もだが)
……答えはひとつだった。
黒単信心、Mono-Black Devotionだ。
テーロス期における黒単信心というアーキタイプの成り立ちは本当に特殊だった。
前環境のスタンダードで全く活躍しなかった《群れネズミ》と《冒涜の悪魔》、テキストの誤植以外で話題にのぼることのなかった《地下世界の人脈》が4枚入るところからスタートしていて、《英雄の破滅》と《思考囲い》は説明不要のカードパワーなのでアレだが…レア度だけで見れば神話レアが1枚あるかないかだけで済んでしまう。
そしてデッキのフィニッシャーは剥いて出れば爆アドのプレインズウォーカーでも、悪魔と呼ばれた過去のカードのリメイクレアでもなく、単なるコモン…《アスフォデルの灰色商人》。
単体だと弱いカードの組み合わせ、シナジーによって爆発的に強化される、おそらく今の環境でしか成り立たないであろうデッキだった。
RTRの時にノリで買った《群れネズミ》と《冒涜の悪魔》、そして絵がかっこいいから1枚50円で4枚買った《夜帳の死霊》がここまで爆騰するとは全く予想もしていなかった(人脈だけはマジで要らないと思って買わなかったのでここだけは買った)。
《思考囲い》はマジでヤバいやつと聞いていたのでしっかり4枚揃えていたし、《生命散らしのゾンビ》や《英雄の破滅》もまあ黒組む日が来るだろうと思って持っていた。
軍勢のカードも《胆汁病》と《悲哀まみれ》だけ買って済む。これでデッキとして組むこと自体は容易にできた。
青単で3−0した日、俺は完全に調子に乗っていた。
帰りにかじくんと伝説のすた丼高田馬場店に行って飯増し肉増量の生姜丼をかき込みながら、「でもやっぱ青単は違う気がすんよ〜」「次は黒単使って3−0するわ」「3−0するまで黒かな」と何度も言ってたのを自分でも覚えている。
そして次なる目標もあった。
ゲームデーの上位入賞プロモの《苦痛の予見者》がメチャカッコ良かったのである。
ゲームデープロモが2分の1くらいの確率でもらえるような小さいお店の常連の方や、常勝不敗がモットーのプロプレイヤーの方には伝わらないかもしれないが、それまでの最高戦績がFNMの3-0だった俺からしてみれば、それはかなり大きな目標だった。
…まずどのお店でやってるのわからなかったし。
それからはひたすら血の滲むような練習の日々だった……
嘘だ。
俺は本当に調子に乗っていた。
黒単ではないものの同じTier1である青単で、あの上級プレインズウォーカー御用達の日本で一番大きいマジックザギャザリング専門店である晴れる屋の発売日記念FNMで全勝したことで完全に天狗になり、Tier1使ってりゃまあ手痛い負けはないだろうし、ゲームデープロモもまあいただいたも同然ですね、《変わり谷》を買えない貧乏人の方はごめんなさいねと思っていた。割と本気で。
…思い返せば青単で3−0した時当たった相手は、一戦目初心者→二戦目は相手がダブマリしまくり→最終戦はほぼリミテ専で晴れの常連ではない、というイージーモードで、しかもこちらはブン回りパターンの強い青単だったので、必然的に勝つと言ってもいいような試合内容だった。
しかし俺のデッキは既に青単ではなく…神々の軍勢発売時からメタゲームは既に動き出していて、晴れる屋には言うほど初心者もいなくて…俺の黒単は全く歯が立たないのだった。
何より…黒単の打ち回しが、青単よりも難しかった。
黒単にとって一番の敵は、突き詰めてしまえばミラー戦になる、と今の俺は思う。
古文書で伝え聞くCaw-Bladeの時期に比べればまだ全然マシな方だとは思うが、結局、軍勢発売〜ニクスへの旅発売までの間、happymtgのTOPに表示されている、スタンダードデッキヒットチャートの一位は黒単だったのだ。
黒単のミラー戦は「先に人脈を貼れなかった方が負け」「2ターン目に着地した群れネズミを除去できなかったら負け」に殆ど限られる。
これに続いて「商人を引けなかったら負け」があるが、言ってしまえば結局はどれも純然なドロー勝負になる。
…なるのだが。
だがそれもお互いの力量が拮抗している時にそうなるという話で、それまで黒単を全く使ってこなかった俺には、それ以前で躓く事案が非常に多かった。
デッキに入れる適切な除去の種類と枚数。Tier1デッキに対する正しいサイドボード。ハンデスを打つタイミング。
何より青単との一番の違いは、明確なブン回り勝ちパターンがほぼ存在しないことだ。
青単は3ターン目タッサor夜帳、4ターン目に波使いorジェイス等が置ければそれが明確な勝ち筋となり、1・2ターン目の生物はとりあえず殴ってライフを減らしておけば、最終的に波使いくんが全部解決してくれる。
もしくはタッサ様の占術と二股槍がアドバンテージを稼いでくれて、最終的にはアンブロ能力での押し込みやカードアドバンテージの差で、賭博黙示録カイジの沼パチを押し込んだときのように勝利が待つという、構造的な理解が非常にしやすいアーキタイプだった。
対して黒単側は1・2ターン目の選択肢に「ハンデス」「除去」「群れネズミを出す」の3パターンがある。
ハンデスは1ターン目からの選択肢なのでまた悩むのだが、ネズミか除去かが難しく、返しのターンの行動を阻害するために除去を構えるか、ネズミをブン回すかで一つ悩むところがあった。
「テーロスはテンポ環境」という言葉を、スタンのトーナメントプレイヤー各位は一度は聞いた事があると思うが、占術ランドと変わり谷による土地の出し方とマナの使い方が重要で、要するに如何に無駄なく動くかという事なのだが、黒単はこの除去の構え損が大きく響いてくる。
3ターン目にゾンビ4ターン目に冒涜、という風に動けない場合、2ターン目にネズミ出しておけばよかったね笑、という事になりがちだった。
アーキタイプやカードプールへの理解が浅かった事も敗因としてもちろんあるし、プレイングだけでなくデッキ構築自体も実は温かった。
実際の構築で、土地や生物に関してはGPのレシピそのままにすることが多かったが、スペルに関しては中途半端にフィールドを読んだり(あそこの人フリーで白ウィニー使ってるから悲哀まみれサイドに入れとこ!みたいな)、なんとなくの調整でいじっている部分もあり、メインに破滅の刃を入れたまま黒単ミラーに臨むような、全く噛み合わない構成のまま戦う事もあった。
結局、岩手あたりから来たボロスバーンを駆る木野さん、この頃少しずつ名を上げていたアーキタイプ、「バントウォーカー」を携えたたかちゃん、そして京都から飲みに来たオリジナルデッキのたひさんの三人と共に出た軍勢のゲームデーは…初戦で初心者みたいなナヤオーラと当たり、サイドで悲哀まみれも胆汁病もガッツリ入れた迎えた2戦目に、英雄の破滅以外の除去を何一つ引かずに負けるという悲しい結果に終わった。
初戦で負けるとオポーネント的にプロモにはほぼ届かず、また相手が本当に初心者だったのでこの先勝ち進んで相対的にオポーネントが上がる目もない。完全に惨敗だった。
この頃はかじくんに誘われるたびに晴れの平日大会に出たり、一人で遊vicの平日スタンに出たりしていたのだが、本当に鳴かず飛ばずでしんどい時期だった。
PWCのレシピでタッチ赤のものがあってそれを真似してみたり、タッチ青で概念泥棒を入れてみたりと色々試してもいたが、そもそもこの頃はまだ基本の動きがブレていたせいで負けていたような気がする。
2−1ラインにさえ届かずに1パックも貰えず、ただただ晴れる屋にお布施する日々が続いた。
一緒に出たたかちゃんがキオーラ様のFoilを引いたり、かじくんが神ゼナゴスを引いたりしている横で、死んだ目でグッタリ倒れていた…
神々の軍勢ゲームデーに参加したのは池袋のイエサブで、ゲームデーの日に大会では初めて行ったのだが、狭い店舗ながら店に余ったプロモをランダムで配るなど結構大会は出る得な感じだし、常連と店員が仲良くて独特のワイワイ感も割と気に入っていた。
ここでなんと昔懐かしTIME SPIRALのロゴ入りTシャツが賞品の大会があるという話を聞きつけて、この日に調整して出たのが、ラクドスビート。
…そう。黒単に心折れてビートを…とげの道化を2ターン目に走らせることを選んだのである。
調整元に選んだのはBMのこのレシピ。
・村栄龍司「リュウジのバーン道場」第7回 神々の軍勢後のスタンダード:赤と緑か黒
とげの道化を採用しながら、向こう見ずな技術などの除去されるとディスアド極まりない細いスペルを採用していないのが気に入った。
マウントは取ったまま殴り倒したい。だが生物の線が細いのは嫌だ…
この気持ちに合致するデッキがここにあったんだと、前日に徹夜でかじくんとひたすら調整しながら俺は強く思った。
そして結果は2−1で、別に普通にTシャツは手に入らなかった。
負けた試合はボロスカラーのビートバーンって感じで、総合的に先手取れてる方が勝つという試合で普通にすれ違って負けた。
俺が除去されるの怖い!アド差で負けたくない!と言って入れなかった向こう見ずな技術を相手はガッツリ採用していたので、何にせよ打点的にまあ勝てないよねという感じではあった。
今思うとこの時に作ったラクドスビートは《とげの道化》によるブン回しからガン攻めするパターンが一番強かったのに、アド取られるのが怖い!っていう理由だけで《向こう見ずな技術》も《悪意に満ちた蘇りし者》もデッキから外し、代わりに単体のパワーの高い《責め苦の伝令》や《英雄の破滅》を入れていて、結果として高速ビートデッキなのに3マナ域が12枚くらい入っていてマナカーブがガッタガタという完全なクソデッキだった。
この後で「2−5理論」の記事※を読んで相当ヘコんだのを今でも覚えている。2マナのカードは本当に大事。
※5ばさんMTGブログ、「2マナと5マナに重点を置くデッキ構築、2-5理論」
ラクドスビートは俺には無理だ…と、一度折れた心が更に逆方向に折れて、また黒単の調整をしていくことにした。
ネット上のリサーチとそれまでの戦歴を鑑みた結果、次に落ち着いた調整はいわゆる「三日月ブラック」だった。
・DiaryNote「ほまれぽーと」:三日月ブラック Updated
これまでの敗因がひとえに除去を構えたことによるテンポ損だと思っていた俺にとって、このレシピはとても魅力的だった。
《漸増爆弾》の採用で毎ターンの確定行動により構え損を無くし、占術ランドの不採用によって谷で殴れる余裕を作り、《闇の領域のリリアナ》と《責め苦の伝令》をパッケージとして採用することで商人以外の攻め手を持ち、強固なブン回りパターンを得た。
一度ラクドスビートを経由したことでマウントから殴ることの強力さに魅力を感じていたのも事実だ。
これによって1−2ラインは脱し、だんだんと2−1こそ増えたものの…3−0に届く事は一度もなかった。
その2−1の勝利も、初戦に負けた後に初心者やメタ外の相手を群れネズミで殺して勝つみたいな、言い方は悪いかもしれないが…なにか虚しい勝利ばかりだった。
それでも今まで勝ち筋の見えないデッキに明確な勝ち筋が増えた分打ち回しはかなり楽になって、責め苦の伝令さえ授与できれば押し切って勝つ、という試合も多かった。
リリアナを出す度に「えっリリアナ…」って意外そうな反応が相手から帰ってくる事も気持ちがよく、毎ターン沼を持ってくるのも人脈に比べてライフロスがないのでストレスフリーの楽しさがあった。
そして次の大会は、晴れる屋開催のPWP30レベル以下限定大会「ビギワン!」だった。
休日トーナメントと同じ規模=MAX6戦くらいするトーナメントで、FNM以上の規模の大会はこれが初めてになる(ゲームデーの日は店的にも結局小さい規模だったのでスイスドロー3戦で終わった)。
勝ちたい。そして結果を残したい。
せめて悔いの残らないような戦績にしたい。もう少しだけラインを上げたい。
冷静に考えて…そのためにはやはりリリアナなど積んでいる場合では全然なかった。
かじくんとの激論の結果出た、リリアナも責め苦も勝ちには直結しない、ちゃんとネズミ使え!という結論。そしてもはや自制の効かないほどの「勝ちたさ」。
結果選んだのはGP北京の渡辺裕也プロの黒単信心だった。
・【MTG】スタンダードにて行われたグランプリ・北京2014 優勝は黒単信心を駆る渡辺雄也選手に 4位に澤田選手、5位に中村選手、8位に清水選手と日本勢が大健闘:イゼ速。
この頃のスタンダード環境は、確実にバーンがその数を増やしてきている頃だった。
Tier1を巡るグルールモンスター、青単信心、黒単信心、青白系コントロールの4つ巴の戦いに決着がつかず、それぞれのデッキが少しでも不利と思われるマッチアップにサイド用のカードを割いていった結果、ギミックとしてライフゲインするカードの採用率が全体的に低くなり、その隙を突いて一気に評価を上げたアーキタイプだ。
特にGPレベルの地域差で見ると中国・韓国の方ではバーンの人気がかなり高いという話だったので、GP北京ではバーンが優勝するのか、それとも明確なバーン対策が間に合うのかに注目が集まっていた。
そこでこの渡辺プロの《死の大魔術師の杖》4積み、そしてGP北京優勝という結果。
これは俺の目にも本当に鮮烈に映った。
晴れる屋でもこの頃少しずつバーンが増えてきていたし(増えてきたというよりは昔からバーン好きなんですよ〜って人が使っている印象はあったけど)、大会に出れば一度はライフを焼きつくされて死ぬという試合が多かった。
正直《アスフォデルの灰色商人》のドレインに《頭蓋割り》を合わせられる辛さはすさまじい。嗚咽が漏れるレベルで。
そうして「ビギワン!」である。規模は休日スタンと同じ全6回戦近く、現在隆盛しているバーンと当たらない保証がどこにあるだろうか。
いやない。
そして求めているのは完成度の高い黒単信心。
ならば──完コピするしかなかろう。これが答えである!
……結果言ったほうがいいですか? 1−3ドロップです。
初戦でジャンドコン(なんか《ネシアン未開地の狩猟者》とかいうのが出てきた)と当たって普通に負けた後、気合い入れ直して向かった黒単ミラーで勝てず、ドランリアニにも負けて、やっと取った一勝の相手は「茶単」…特殊地形とアーティファクトだけで構成された、他の環境であれば強力だったであろう…スタンダードではファンデッキだった。発想的には滅茶苦茶面白かったけど。
結局あれだけ警戒していたバーンは周囲を見渡しても一人もおらず、大会結果上位にもバーンはいなかった。
前日に大急ぎで買ってきた《死の大魔術師の杖》をサイドインすることは一度もなく…いや黒単相手に入れたような記憶もあるが…引かなかったので活躍はしなかった。
それもそのはずで冷静に考えてみればビギワンはPWP30レベル以下の大会なのだ。隣の席では今日はじめて大会出るんです〜という人も多かったし、かなり遊んでるタイプの人もメインフィールドが下環境なのでPWPあんまり高くないんですよね〜という人ばかりだった。
スタンの最前線の情報を追っていたから、GP優勝のレシピだから何だったというのだろう。
ちなみにこの日ドロップ後にした身内の4ドラも普通に勝てなくてエルズペスを持って行かれた。
まあでも《死の大魔術師の杖》は悪くない。
純然たる(?)メタ読みの結果機能しなかったというだけで、サイドに4枚無効なカードを取っていても残り11枚が機能するならば問題はないはずなんだ。
デッキパワーは高いはず。だって実績で選んだのだから。
なのに、勝てない。もー全然勝てない。
本当に心に響いていたのは、今まで公式の試合の中で黒単系のミラーに勝ったことが一度もないことだった。
相手がタッチ青、タッチ白、タッチ緑、タッチ赤…《苦痛の予見者》を入れたり、《責め苦の伝令》を入れているタイプのものとも当たったが。
《群れネズミ》《冒涜の悪魔》《アスフォデルの灰色商人》を軸にする黒単信心コントロール系のデッキには、ここまで一度も試合で勝っていない。
敗因はサイドミスだったり、《胆汁病》をネズミに撃つタイミングを間違ったりなこともあったけど、殆どは商人が引けないとか、人脈が貼れないとか、そういう試合ばかりだった。
結局土地25枚が信用できず、5枚並ぶ前に止まることが多かったので、GP北京のレシピのメイン強迫1枚を抜き、土地26になった以外はそのままのレシピで大会には出ていた。
池袋YSで出たフライデーナイトマジックで、初戦黒単に負け、二・三戦目は初心者の方×2と当たり、勝った試合は全て《群れネズミ》と《変わり谷》がブン回って2−1した日の夜。
かじくんとあつもりで大盛りのやすべえのつけ麺をモリモリ食いながら、俺は思った。
本当に俺がしたいマジックってなんだろう。
この頃一緒にマジックするようになった地元の友達である、もこねこさんともそういう話は何度かしていた。
自分の本当にやりたい動きが、コンボができれば、自分の好きなカードが使えれば、楽しい。
楽しい。
俺は何が楽しかったのか。俺は何がしたかったのか。
何をしたら俺は楽しくなれるんだろうか?
考えた結果、俺は多分、除去スペルが好きだ。
相手の盤上に現れた強大な脅威を、たったワンアクションで処理できる。
どんなに不利になっても脅威さえ取り除けば、とりあえずすぐ負けることはない。
ビートよりもコントロールを、クリーチャーよりもスペルを欲する。
相手のカードに1枚ずつ対処し、圧倒し、打倒する。
そして派手に決着を決められたら、最後に立っているのが自分であれば──そんな気持ちのいい事はないだろう。
やすべえを食べた後、家でやけ酒を飲んでベロンベロンになりながら、俺は思い返した。
今までの黒単信心の中で自分の気持ちよかった瞬間は──楽しかった事はなんだろうか?
インスタント除去を撃っている時──間違いなく楽しい。《英雄の破滅》はいいカードだ。
灰色商人を叩きつけている時──あれこそまさに「圧倒」している瞬間だと思う。そのアクションでゲームが終えられたらそんなにいいことはない。
思考囲いを撃っている時──これは凄く安心する。相手のプランを丸裸にする瞬間はたまらない。脅威を取り除けるならもっと最高だ。
ただ…《群れネズミ》は…どうだろうか?
ネズミを展開している間は、不要な手札が1枚ずつ減っていく。
《地下世界の人脈》を貼っていれば枚数的なアドバンテージは確保できるが、貼れない時とか、手札にある有用そうなスペルを選んで捨てなければいけない時がある。
それに起動コストにマナもかかる。3マナあれば撃てない除去は黒単のデッキにはない。
それでいて群れネズミは対処されやすく、相手からしてみれば明確な勝ち筋の一つなので、全力で阻害してくる試合が殆どだ。
ネズミを出しているだけで勝てる試合は──正直、Tierを上げないデッキを使う初心者くらいだと思う。
少なくとも…今まで一度もミラーに勝ったことがない俺の戦績では、そんな試合ばかりだった。
そして今までの敗因は──ネズミが展開できない場合の勝ち筋は、《アスフォデルの灰色商人》になる。
それを引けないのでは話にならない。ミラーで負けるのはそんなマッチばかりだった。
相手が超高速ビートでも、序盤を凌いで最終的には灰色商人を着地させなければいけない。
出せる状況であれば灰色商人は何枚引いてもいいカードだ。
今までの話を加味した俺のデッキの条件は、
・土地26枚。
・除去をきちんと撃てる。(これはたいていの黒単信心のパッケージならば問題はない)
・群れネズミは使いたくない。
・5枚目の灰色商人を入れる。
そしてそれに見合うデッキとの出会いが…あった。
個人で海外記事の翻訳をしてくれている、海外の監視者さんのブログがある。
・《MTG 海外の監視者/MTG Oversears》
その中でCFBのオーウェンが黒単のサイドボードに関して、「相手のプランが全てわからない以上、本当に正しいサイドボードって無理だよね(笑)」みたいな記事があった。
・【MTG】<翻訳記事>Owenのサイドボード戦略論 by Owen Turtenwald
記事の中でオーウェンが
「相手が初手に悪意の神殿を置くような時は、群れネズミは入ってないから胆汁病はすべて抜くだろう」
みたいな事を言ってる所がある。
俺の知るメタゲームや構築論の中ではそういう風に思うようなデータは正直一度もなく、かじくんと「これどういう意味なんだ?」ってTwitterで話していた。
監視者さんからは「多分タッチ白の後の話だから、オロスコンみたいな感じのデッキの事ではないか」という返信をもらっていて、よく知らないけどそうなのかな、と若干腑に落ちない感じではあった。
新デッキで悩んでいた日の翌日、その時の会話に対して、全くのフォロー外の人から突然リプライが届いた。
「イーフロの作った黒タッチ赤信心だったらみたいな意味だと思いますよ」
そして教えてもらった翻訳記事。
・Voyage of Finding Right Answer:【翻訳練習】BR Devotion at GP Cincinnati
そこに、答えがあった。
「黒単タッチ赤信心」
土地26
血の墓所4
悪意の神殿4
ラクドスのギルド門2
変わり谷4
沼12
生物13
生命散らしのゾンビ4
冒涜の悪魔4
死者の神、エレボス1
アスフォデルの灰色商人4
スペル21
思考囲い4
肉貪り3
胆汁病2
戦慄掘り1
英雄の破滅4
地下世界の人脈4
エレボスの鞭1
ラクドスの復活2
サイド15
強迫3
破滅の刃3
ファリカの療法3
悲哀まみれ2
死者の神、エレボス1
殺戮遊戯1
狂気の種父1
ラクドスの復活1
ネズミ抜きの黒タッチ赤信心。
キーカードは前環境でのグリクシスコントロールを支えてくれた、《ラクドスの復活》。
言ってしまえば相手の場に着地する前に引っこ抜いてしまうハンデスは、対応幅で言えば最強の除去スペルだとも言える。
そして《ラクドスの復活》、ラクドスリターンは、ネズミを使わないコントロールデッキのフィニッシャーとして最高のカードでもあった。
翻訳記事にもある通り、土地を伸ばして撃つラクドスリターンと不要な土地を捨てて数を増やす《群れネズミ》は相性が悪いため、ネズミを抜く理由になる。
その代わりある程度のマナフラッドを許容できるため土地26の構成が可能になり、土地が止まる展開を予防できる。
実際は勝ち手段である《群れネズミ》との交換になっているだけだが、5マナ以降でキャストするラクドスリターンは実質5,6枚目の《アスフォデルの灰色商人》として機能する。
そして《群れネズミ》がいない場合、引いたカードは必ず使う……除去を適切なタイミングで撃ち、時間を稼ぐような展開に必ずなる。
その為の《ファリカの療法》や《悲哀まみれ》で白系ウィニー等のビート相手はクリーチャーを丁寧に除去し、ライフドレインから一気に捲る動きができる。
それが俺にはピッタリの──本当に自分がしたい行動ができる、最高のデッキだった。
ネズミと交換でデッキの軸となった《ラクドスの復活》だが、対コントロール以外にも、割と撃つタイミングには事欠かないカードだった。
・展開が遅れて土地が詰まった相手には、手札を全て落とせないX数でもとりあえず撃つことで有効牌が落とせてアドバンテージが稼げるし、自分の優位が確定する。
・白ウィニーやバーンなどのビートデッキでも1:1交換の後、土地フルタップ時などを狙って手札を全て叩き落とす事で一度盤上に蓋することができる。自分の方が手札が多ければトップ勝負的にも優位。
・キオーラやジェイスなどで手札を増やされても返しのリターンでアド差をゼロにできる。X=3以上で撃てれば最低限のアドバンテージは確保。
など。
ネズミがいない=不要な手札をキープしている必要がない以上、引いたカードをガンガン使いにいくプレイングになるのも精神的に一つ楽で結構良い。
《至高の評決》や《拘留の宝球》、《胆汁病》を気にする必要がないのは非常に楽。
ラクドスリターン以外にも《殺戮遊戯》が積めることで対コントロール戦には非常に優位だと思う。
通常の黒単よりも特にミラー戦、対黒単相手に非常に強い構成になっている。
メインから《死者の神、エレボス》が入っている事で最初からサイド後のようなマッチアップができる。
実質5枚目の《地下世界の人脈》と数えてもいいし、相手の商人が腐るならばそれ以上だ。
実際この構成でやっと、やっと大会の場で黒単同型を圧倒して勝つことができた。
《殺戮遊戯》で相手の灰色商人を抜き、群れネズミを全て《胆汁病》で殺し、全力全開のラクドスリターンで手札を全て叩き落としながら勝った。
…ちょっとオーバーキル感もあったが、念願は叶った!俺は勝ったんだ!
戦績はこのデッキで、池袋イエサブのFNMで2−1、勝ったマッチは全て黒単信心。
そして晴れる屋の平日スタンで…見事3−0することが出来た。
二戦目のフィーチャーマッチではバントコン相手にラクドスリターンをX=7→X=8と二発決めてライフを削り取り、最終戦では《生命散らしのゾンビ》が白寄りのボロスバーンを壊滅させてくれた。
素晴らしいデッキをありがとう…感謝の気持ちをTwitter経由でイーフロに伝えることもできた(URL)。
ありがとうラクドスリターン!ありがとうEric Froehlich!!
ここまで書いておいて何だが…よくよく考えてみれば、いや途中で気づいてたけど、別に平日大会で3−0したっていうだけの話なんですよねこれ。
別にPTQに出たわけでもPWCに出たわけでもないし休日スタンで優勝してもいない。
まだ俺は何もできてないわけで…何かもっと大きな大会で結果を残す事をこれからの目標にして、もう少しスタンを続けていこうと思います。
あとこうやって書き残しとくと未来の自分が割と楽しんでくれると思うので。
ちなみにニクスへの旅発売後は《双つ身の炎》を入れて灰色商人や冒涜のコピーでドレイン&ビートして行くテクニックを考えてます。
《マナの合流点》は考えたけど入れるほど色キツくもなさそうかなと。
そんな感じで。
旅は続く!
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